真面目なあたしは悪MANに恋をする
クラスの奴らはみんな桜木のほうに注目する

俺は鈴菜の顔を見た

鈴菜はぱっと俺から視線をそらして、桜木のほうに動かした

「どうして目をそらすの?」

「そ、そらしてなんて…」

「そらしてるでしょ?」

「だって…私、透理君に迷惑ばっかりかけてるから」

「なんでそう思うの? 俺、迷惑なんて思ってない。目をそらされるほうが嫌だよ」

鈴菜の視線が俺に戻ってきた

「本当に?」

「どうしてそう不安そうな顔をしてるのさ」

「だって、桜木さんが透理君の足を引っ張ってるって言うから。そうなのかな?って」

俺は『くす』と笑うと、鈴菜の頭を撫でた

「そういうところが可愛いよね。俺、鈴菜がいないとダメなんだ。だから足を引っ張られてるなんて思ってない。むしろもっとわがままを言って欲しいくらいだよ」

俺は足を組みかえると、口を緩めた

愛だの恋だのって騒ぐことなんてないと思ったのにね

俺は、恋愛に感情を乱されるなんて格好悪いって思ってた

金が全て

あとは何もいらない

裏切られる未来しか待っていないのなら、そんな未来を作りたくないって思ってた

だけど、そう思っていながら、俺は誰かに愛して欲しかったのかもしれない

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