真面目なあたしは悪MANに恋をする
「鈴菜、帰ろうか」

「え?」

「家に帰りたい」

「あ、うん」

鈴菜は近くにあった鞄を肩にかける

俺は立ち上がると、しわのよっている服を整えた

「俺ら、帰るわ!」

俺は少し大きめな声を出して、出口に向かって歩き出した

「え? もう?」

クラスの奴らが目を丸くする

「ああ、帰る。またな」

俺は鈴菜と手をつなぐと、飲み屋を出ていった

引きとめられる隙も作らずに、店外に出ると扉をしめた

「不思議だよな」

駅に向かって歩き出した俺が口を開いた

鈴菜はわけがわからない顔をして、首を横に倒した

「俺さ。一生、誰も好きならないと思ってた。父親が家の全財産を持って、女と逃げてから…俺、絶対に金に困るような生活なんてしたくないって思ってた。だから金さえあればいいって感じてた」

俺は苦笑した

「俺の考え、間違ってたかも」

ぎゅっと鈴菜が手を握りしめてくれる

「私、バイトしようかな」

「え?」

「だって、透理君ばっかりに負担かけさせたくないよ」

「夜のバイトは禁止ね」

「え?」

鈴菜が目を大きく開けた

「だって、そうでしょ?」

「でも靴屋の仕事のあとだから…」

鈴菜の声が小さくなる
< 382 / 438 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop