真面目なあたしは悪MANに恋をする
ケンが肩をがっくりと落として、まだ何か言いたそうな顔をしながら、私の寝室を出て行った

私が見送りをしようとパジャマの上にカーディガンを羽織ってから、居間に行くと、ケンがジャケット着て、肩から鞄をかけて立っていた

「また、仕事のときに」

「ええ。またね」

私が軽く手を振ると、ケンが背を向けて玄関に向かった

私もケンの後ろをついて玄関に向かう

「あ…アドレス教えて。俺、まだリンのを知らない」

「そうだったっけ? じゃあ、赤外線で」

私は寝室に置きっぱなしになっている携帯を取りに戻った

「あれ? どこに置いたっけ?」

私はベッドの布団をばさっと持ち上げると、首をかしげた

いつもなら枕の横に置いてあるのに、今日はどこにあるかさっぱりわからない

「俺、一晩一緒にいたからって錯覚しているわけじゃない」

ベッドの上で四つんばになっている私の後ろから、ケンが抱きついてきた

「いろんな女と恋愛ごっこしてきたけど、リンみたいな気持ちになったのは初めてだよ」

「ちょ…なに、言って…」

ケンの熱い息が首筋にかかる

私が身体を起こすと、ケンにぐいっと引かれてベッドの上でケンの膝に座ってしまった

私の太ももに、ケンの股間が元気になっている違和感を感じた

「ちょっと、なんで?」

昨日は全く何をしても、落ち込んでいた物体がなんで今になって元気100倍になっているわけよっ!

私はケンから離れようとするが、ぎゅっと両手で押さえこまれている私は動けなかった

「まだ帰りたくない」

「いや…帰ったほうがいいって。他にもバイトしてるんでしょ?」

「してる。けど帰りたくないから、帰らない」

「そんな無茶苦茶な理由を言わないでよ」

「だって、リンが俺の気持ちを理解してくれないからだろ」

「そんなこと言われたって。今までずっとそうだったんだから、仕方ないじゃない。なら試してみれば? すぐにケンの元気がなくなるわよ」

「そうする」

ケンの吐息が私の耳にふっとかかった

そうよ、昨日だってできなかったんだから、今回だって無理に決まってる
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