真面目なあたしは悪MANに恋をする
突然、鞄の中でメールが鳴って俺の身体がビクンとはねた

肩にかかっている鞄の中から、携帯を取り出すとメールを見た

『リンです。明日のショーで、スーツアクターに欠員が出たの。急だけど、お願いしていい? ケンなら、みんなの練習を見ているから、なんとなくわかるでしょ?』

俺、裏方が好きなんだけどなあ

『いいよ。明日、早めに行くから、きちんとした動きを教えて』

『ありがとう。ご褒美は何がいい? 給料アップ? 上に交渉しておくよ』

『リンが欲しい』

『馬鹿ね。あげないわよ』

俺はふっと口元をゆるめると、携帯をぱたんと閉じた

俺、何をやってるんだろ

真理の写真を見て、やっぱり俺だけが幸せになるなんて許されないって思ったばかりのくせに

リンのメールを見て、こんなに喜んでいるなんて

仕事のメールなのに、嬉しく思っている

またリンを抱きしめたいなんて思ってる

「ほんとに、俺は馬鹿だな」

俺は自嘲した笑みを浮かべると、携帯をシングルベッドの上に投げた

「そういえば、リンのベッドはダブルだったな。どうしてダブルなんだろう。一緒に寝る予定の男がいたのかな?」

リンと違う男が寝る想像をする

苛々した

自然と下唇を噛んで、顔の筋肉に力が入っていた

「だから俺に、嫉妬する権利はねえんだよ」

俺は首を横に振った

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