真面目なあたしは悪MANに恋をする
ただおろおろしているだけで時間だけが過ぎ、結局何もできないまま、私はケンを家の中に招き入れた

ケンは赤いツナギを着て、靴も脱がずに玄関でにこにこと笑っていた

「リンから電話をもらって嬉しかった。でも、ここで少し話をさせてほしいんだ。俺、きちんとリンに話さないといけない。じゃないとリンの部屋には上がれない」

ケンが唇を舌先でぬらすと、私の目をまっすぐに見つめてきた

「俺、リンと真面目に付き合いたいって思ってる。だからこそ、俺は、俺の知られたくない過去を話すよ。俺、義理の妹を抱いたことがある。妹と恋愛をして、死なせてしまった」

え? 何を言っているの?

もしかして忘れられない人って、妹ってこと?

「両親にばれて、俺は家を出た。妹ともう会わないつもりで…。だけど妹は俺のあとを追いかけてきた。まだ俺が好きだと言った妹は、俺と付き合えないならと、自殺をしたんだ」

「ちょ…ちょっと待って」

私は、ケンの前に手を出すと、左右に振って話を止めようとした

「リン、聞いて」

「これ以上、聞きたくない」

「いや、聞いてほしいんだ。俺の話しに抵抗を感じるなら、もうリンとは会わないから」

「違うの。そうじゃないの」

私は、背伸びをするとケンの両頬を手で覆った

「ケンが無理してるでしょ? 急がないで。今は、妹さんと恋愛をしていた…ってだけでいいから。ね。無理やり、心の傷をえぐらなくていいのよ。わかったから。ケンの気持ちがわかったから」

「リン…俺…」

「無理しないでいいのよ」

ケンはぎゅっと私を抱きしめてきた

腰が痛くなるくらい

ケンは強く抱きついた

「ありがとう」



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