真面目なあたしは悪MANに恋をする
ケンはにこっと微笑むと、私の額にキスをした

「おかえり、リン。無事に帰ってきてくれて嬉しいよ」

ぎゅうっとケンが、私を抱きしめてくれる

撮影が終わって帰ってくると、ケンは必ず私を強く抱きしめる

おかしな人だよね

一年も一緒にいるのに、愛情が冷めるどころか付き合った頃よりも私のことを好きだと言う

私はめでたくスーツアクターとしてデビューできた

今は、レギュラー一本と単発で映画のスタントが入っている

「ねえ、リン。明日、どっか出かけない?」

「明日?」

「うん。お弁当を持ってさ」

「誰が作るの?」

「俺が作る! 行く場所はもう決めてるんだけどさ。リンには内緒」

「いいけど。明日って平日だよ?」

「年休とった」

「は?」

いつの間に…って、私が明日休みじゃなかったらどうするつもりだったのよ

「ケンは営業でしょ? 実績とか平気なの?」

「ああ…うん。平気。俺、こう見えても成績優秀者なの」

にかっとケンが笑う

確かに

他人とのコミュニケーションとかウマそうだよね

「リストラ対象者にならないでよ? 私、男を養うなんてイヤだから」

「大丈夫!」

ケンはピースをすると、きっちりと結んであるネクタイを緩めた

「明日は、久々のデートだね」

ケンは嬉しそうに笑みを見せると、着替えるために寝室に入って行った

「ま、いっか」

たまにはケンの好きなように、時間を使うのもいいね

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