真面目なあたしは悪MANに恋をする
いつもケンには我慢させちゃってるしね

私は、DVDの停止ボタンを押すとケンを追いかけるように寝室に入った

「ねえケン、明日のお弁当は一緒に……って何してんの?」

スーツも脱がずに、ベッドに座って携帯をいじっているケンを私は睨みつけた

ケンは、ぱっと顔をあげると、携帯をぱたんと閉じて、ぎこちない笑みを私に向けた

「何、焦ってるの? 携帯…見せて」

「いや…べつに、その…」

ケンが携帯を枕の下に隠した

「ちょっと、見せてよ」

ケンは携帯を私に差し出す

私はケンから携帯を奪うと、開いて画面を見つめた

液晶には大きく『削除しますか?』と表示されている

その下にはいやにカラフルな絵文字が目に付いた

ハートマークがいっぱい

「何、これ」

「別に浮気してるわけじゃないから! 誤解しないでよ。営業相手からの人たちからで…」

「ふうん」

「本当だって」

「『昨日のランチはとても美味しかったです。また誘ってくださいね』だってえ。ケンから誘ったんだあ」

「だから、書類を渡す用事があったから…そういうのも仕事のうちなんだって」

ケンが立ち上がると、必要以上に手を動かして説明をしている

「ハートマークが?」

「なんなら、俺のメール見る? 絵文字なんて使ってないよ。…ていうか、電話ばっかだし」

「いいよ、別に。仕事なんでしょ?」

私はくるっと身体を回転させると、寝室を出て行こうとする

やっぱライダーの続きを見ていれば、良かった


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