真面目なあたしは悪MANに恋をする
「親のその姿を見たら、なんか糸がぷつんと切れたよ。ああ、俺、前に進めるって気がした。リンと一緒に人生を歩めるって思えたんだ」

ケンは私の手の中にある指輪をつまむと、私の薬指にはめてくれた

「リンを養うほど、俺、稼げてないけど…まだまだリンの世話になりっぱなしだけどさ。いつか…近い将来、同じ姓になって欲しい」

「うん、ありがと」

私の返事に、ケンが幸せそうに目を細めた

「よしっ! じゃあ、今日は遊園地を楽しもう」

ケンが車から降りようとすると、ケンの携帯が激しく鳴りだした

「なんでこんな時に」

ケンはぶつぶつ言いながら、胸ポケットから携帯を取り出すと電話に出た

「チョー、どうしたんっすか?」

どうやら、ケンが逆らえない人からっぽい電話だ

ケンより二つくらい年下の男らしいんだけど、『チョー』と呼ばれる彼にはケンは一度も逆らっている姿を見たことがない

「え? 今からっすか? なんで透理の嫁さんの産気づいた姿を見に行かなくちゃいけないんすか!」

どうやら、ケンはチョーに呼び出されたみたい

「ああ…ていうか。今、遊園地にいるんすよねえ」

ケンは眉間に皺を寄せて、困った顔をしていた

「仕事ではないんすけどぉ」

「ケン、いいよ。行きなって」

私は、ケンの腕に触れてにこっと笑った

「…ああ、わかりました。すぐ行くっす。透理さんの家でいいんすね?」

ケンは、がっくりと肩を落とすと携帯を閉じた

「自宅出産するから、全員集合らしい…って俺らが行ったって何の意味もない気がするんだけど」

「不安なんじゃない?」

「ああ…せっかくリンとデートできると思ったのに」

ケンが残念そうに車の中で叫ぶと、鍵を差し込んでエンジンをかけた

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