真面目なあたしは悪MANに恋をする
「あ…っちぃ!」

青いツナギを着ている男が、頭にかかったコーヒーに雄たけびをあげた

バイクを路上に倒して、頭や手に振りかかったコーヒーの熱さから逃げるように、歩きまわる

「んだよっ、何すんだよ」

坊主頭の男が、振り返ると僕を睨んできた

「煩いよね。青いツナギが」

坊主頭の男の背後から、聞きなれた声が聞こえた

え?

坊主頭の男が、誰かに蹴られたのだろう

膝をついて、地面に倒れた

「マサ?」

「あれ、チョー。どうしたの? チョーも帰宅途中?」

マサが首を傾げた

「帰宅の邪魔なんだよっ」

少し離れた場所から、今度はケンの声も聞こえてくる

「え?」

僕はぎょっとして、視線を遠くにすると、ケンがスーツ姿で、青族のバイクを蹴り飛ばしていた

「あちゃー、これで透理さんがいれば、勢ぞろいだよね」

マサが苦笑した

「いくらなんでも、透理は家だろ」

僕が口を開くと、ぎゃーという子供の鳴き声が聞こえてくる

「ああ、泣かなくても平気だから…って子供に触らないでよねえ」

僕の後ろから、間延びした声が聞こえる

まさかと思うけど…

僕はゆっくりと振り返ると、子供を片手で抱っこしている透理がいた

「マジで? これってすごくない?」

マサが楽しそうに口を開いた

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