真面目なあたしは悪MANに恋をする
-葉南side-

「ご馳走になっちゃうなんて…本当に良かったんですかあ?」

ケイコ先生が消防士の一人に猫撫で声で、口を開いた

「え…あぁ、うん。楽しかったし、この後、カラオケ行くでしょ?」

「行く行くぅ」

酔っているケイコ先生が、明るい声で手を挙げると、飲み屋の自動ドアが開いた

「葉南ちゃんは…来る?」

あたしの隣に立っていた男が、話しかけてきた

「え? あたしは帰ります」

「じゃあ、携帯のアド……」

外に出た男が、外の惨劇に驚いたのか、言葉を失っていた

あたしも何度も、瞼の開閉をして、ごくりと唾を飲み込んだ

「あれって…弟さん?」

ヨウコ先生が、乱闘の中央にいる片岡君を見つけて指をさした

「あ……いや、そのぉ」

あたしは苦笑すると、首の後ろを掻いた

「あ、いたっ! ハナちゃぁん、良かったよぉ」

飲み屋から出てきたあたしに気がついた透理さんが、あたしの腕をぐっと掴んだ

「え? 透理さん?」

「チョーがマジキレ中なんで、よろしく!」

ケンケンもあたしの隣に立つと、にこっと笑う

「ええ? ケンケンまで、どうしたの?」

「いや~、チョーが不機嫌でさあ。あそこまでいったら、もう俺らには止められないっていうかあ」

マサ君も近づいてくると、「よろしくねえ」と肩を叩かれた

「ちょ…なんで、あたし?」

透理さんに引っ張られながら、コンパの輪を外れたあたしは、どんどんと乱闘の中心部分に入っていく

赤のツナギを着ている人たちに、守られながら、中心にたどりつくと、そこには目の細くなっている片岡君が、青いツナギを着ている男たちと揉み合っていた

「すみません。俺ら、しっかりと青を抑えられなかったから」

赤いツナギを着ている篤樹君がぺこっと頭をさげた

「いや…そういうのはあたしの管轄ではないっていうか…ええ、困るよぉ」

あたしは腰を引いたまま、手を伸ばして、片岡君の鞄を掴んだ

「あのぉ…片岡くーん」

あたしは恐る恐る声をかけた

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