真面目なあたしは悪MANに恋をする
車が静かに動き出した

バイト先のとんかつ屋の看板が小さくなっていく

ああ、これでお終いって気がする

あたしの人生、間違った方向に進んでる

固く握った手の上に、温もりが感じられた

顔を上げると、加藤さんがあたしの手を触ったまま、片手運転をしていた

「片手運転はよくないと思いますよ」

あたしが加藤さんの手を振りほどいた

「手、繋ぎたいんだけど?」

「外を歩く時なら…」

どうせドライブなんでしょ?

車に乗ってないときを指定すれば、手をつながなくて済む

「じゃ、公園に行こうか」

加藤さんが提案する

「いいねえ。二人で散歩しておいでよ。俺らはここで…なっ」

寺島君が、気持ち悪くらいな厭らしい声を出す

「うふふ」

茉莉も、嬉しそうに笑った
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