真面目なあたしは悪MANに恋をする

「話が飛び過ぎなんだよ！」

マサ君の言葉が、飛んできた

「えー、だってチョーが…」

テーブルに人の形をした大きな黒い影ができて、ケンケンの言葉が途切れた

テーブルを囲んでいるあたしたち四人の視線がゆっくりと影の正体を追って、窓に顔を向ける

「ち、チョーだ」
「チョーっすよ」
「チョーだぁ」

ケンケン、マサ君、透理さんの三人がそれぞれに口を開く

片岡君は、そんなに大きくない黒い鞄を黒のハーフコートの上から斜めに掛けている

無表情で、じっとあたしたちの様子を見た後、
片岡君は昨日、乗っていた見慣れない二輪バイクから鍵を抜いた

「なんで？　ここがバレてんだよ！」

ケンケンが小声で、透理さんたちに口を開く

「あ…携帯」

透理さんがぽんっと手を叩いた

「削除しなかったのかよ！」

「忘れちゃったみたいだねえ」

透理さんがあっさりと答えると、ケンケンとマサ君の肩ががっくりと落ちた

「削除しろって言ったじゃんか」

「うん、言われたけど…忘れちゃった」

透理さんがにっこりと笑って、外にいる片岡君に手を振る

片岡君はぷいっと視線をそらすと、ファミレスの出入り口に向かって歩き出す

ええ？　こっちに来るのぉ？