真面目なあたしは悪MANに恋をする
ケンケンはにこっと笑みを見せると、あたしにウインクをしてきた

『チョーが心配してるよ』

寺島君に聞こえないように小声で、ケンケンが教えてくれた

片岡君が心配してる?

無表情で、寺島君の背中を見ていた片岡君の姿を脳裏に思い浮かべた

「んじゃ、ウサギちゃん! 夜のデートと参りますかあ」

ケンケンがノーヘルで、バイクのエンジンを入れた

寺島君は、落ちている鞄を引っ掴むと、小走りで走り去って行った

ケンケンのバックミラーに映っている寺島君はどんどんと小さくなっていく

あたしに振り返ることもせず、暗闇に飲み込まれていった

「ハナちゃんが、無事で良かったよ」

エンジン音でケンケンの言葉がよく聞き取れなかった

あたしが聞き返す暇もなく、ケンケンが走りだした
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