†君、男~Memory.. limit of grief~



「所詮人間なんて弱いもの。
 一人じゃ何も出来ない。 
 もちろん私もだけど」


「…」


苦しみながらも恵は
一切手を出さなかった。
それどころか声一つ出していていない。


「あんたもそう…蒼井恵。
 一度手にしたものを失うのが弱い。
 だからこうして庇うのよ。
 たった一人自分と一緒にいてくれる人が 
 現れたんだから」


「レインは弱くない!
 一人なんかじゃないんだから!」


後ろで聞こえてくる燐の叫び。
恵には聞こえてるのかいないのか、
俯いたまま動かない。


「まだ私の話聞いててよ。
 あんたと私では決定的に違うものがある。
 あんたのその目も私にとっては目障りなんだよ。
 可哀想な目なんだから。
 誰もが見捨てていく哀れな人間の目だ。
 それがあんたの私の違いだな」



―「結局お前は一人なんだよ」



「…」


「!!」


突然恵の目が恐ろしくなる。
手を離そうとしたが、それを抑えるように
恵は首を掴ませたまま相手の腕を強く握り締めた。



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