†君、男~Memory.. limit of grief~
「はっ離せ!」
爪を立て、どんどん深く刺していく。
もがき苦しむ相手の様子を伺いながら
瞬間にも恵とその女の立場は逆転していた。
相手の後ろの毛を掴み、
地面に叩きつける。
「レイン…!?」
「ちょっ何して…!」
燐を捕られていた奴は
その様子を見て呆気にとられる。
もちろん燐もだ。
今までに見たことのない
恵みの姿。
恐ろしくも冷たい目をしていた。
「何すんだ…お前」
黙ったまま恵は
掴んだ相手の髪を離さない。
「お前みたいな奴に、私の何が分かる…。
ろくな友達もいないやつが偉そうな口を叩くな。
どうせまともな人間じゃないんだ。
せめてもうちょっとマシな友達を作れよ。
お前の周りの人間はクズばかりで面白くもない」
恵の目は更に相手を恐怖へと導かせた。
それどころか地面に押し付けていた顔を上げ、
もう1度叩きつける。
それは何度も繰り返された。
「もし…今度私達に
何か手を出せば、こんなんじゃすまさないぞ
その口も喋れなくしてやる」
そう言って恵は相手の口に
自分の足を乗せ、
「分かったか?」と呟く。
泣きながら何度も何度も頷き、
その女と仲間の一人は逃げ去っていった。