†君、男~Memory.. limit of grief~
「強くなろうとは思わない。
ただ…自分だけは裏切りたくなかった」
5年前からずっと探していた
たった一人私と接してくれた人。
冷たい私の心を救ってくれた人。
私が好きになった人――…
「こんなにも気持ちはボロボロなのに、
今にでも壊れそうなのに…
まだ呼んでいるんだ」
「…ッ」
恵はドアを開け、
泣き出しそうな目は優介に向けられた。
「いつか諦める…。
諦めなければいけないときが来る。
だからそれまで…好きでいたい」
「苦しむと分かっていても?」
コクンと頷き、
優介にもたれる。
床に何粒の涙が零れ落ちていく。
「何でか分からない…。
どうしてここまで想うのかが」
分からないままなんだ。
もし、真実が分かった時…
私が諦めなければならないという
宣告なのだろうか…。
私はその理由を知るのが怖い。
昔、その理由を告げようとした人が
いたからなのかもしれない。