†君、男~Memory.. limit of grief~


「レイン!!」


生徒会室を後にした恵を
追いかけてきた燐。
前からはガラスの割れた音を聞いて
優介も駆けつけてきた。


「どうしてあんなこと言ったの!?
 レインらしくないよ!」


「…私らしくない?
 なら、本来の私はどうだという」


「えっ」


「何も知らないやつが、
 知ったような口を叩くな」



レイン―――…


どうしちゃったの?



動いてよ…どうして動かないの。
このままじゃレインが――!



「蒼井!」


恵の腕を掴んだ優介。


「一体何があった」


「とっ…突然風で
 ガラスが割れて…それで」


必死で説明する燐だが
それ以上は言えなかった。
恵が言った発言を…。


「悪いが私は帰る…
 燐、後はよろしく」


「     」


固まったまま動かない燐。
恵の後姿が見ていられなくて、
何故か胸が締め付けられていた。


「おい、蒼井!
 何かあったんだろ?
 いつものお前じゃない」


「優兄も同じ事を言うのか?
 私の何を知ってるっていんだ!?
 …やっと理由が分かった…」



何故、ここまでして優兄を
好きだったかが、今分かった。


弱い自分を見つけられたくなかったからだ。


2年前、私の首を掴んだあいつが言っていた。
『結局お前は一人なんだよ』と。


そんなこと分かっている。
けど、気づかれたくはなかった。
今だって同じだ。


弱いことなんて知っている。
ただそれを何も知らないやつに、
気づかれたくなかった。


「ちょっ蒼井」


手を振り払おうとするが、
優介は断固として離そうとはしない。
恵の目から、涙が零れ落ちてきた。


「離せ…」


私は…解放される―――


そう…信じるしかないんだ。



「離せ!!」



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