†君、男~Memory.. limit of grief~
コン…!
「?」
何かが窓にあったような気がした恵は
起き上がって窓を開け、
ベランダに出る。
家の前には優介が立っていた。
「今日…どうしたんだよ。
頭が混乱したか?」
「…ッ優兄!」
「レイン?」
ガクッと膝を突き、
顔を手で覆う。
「ごめんなさい…全て私のせいなの。
貴方の孤独を作り、貴方から離れていったのは
私だった!貴方は何一つ変わってはいないのに、
私が変わったせいで貴方が消えていくこと
にも気づかないで…勝手に優兄が私を
捨ててしまうという不安を抱いてた」
優介は黙って聞く。
恵は手すりを掴んで話を続けた。
「貴方を悲しませないと誓ったのに…
もっと貴方を早く呼んで、
行かないように呼んで…ッ
謝りたかった…!」
「レイン…?」
フッと微かに見えた恵の笑顔。
確かなものになった。
「貴方と言葉を交わすたびに、
今の気持ちが貴方の言う通り
偽りなんじゃないかって思ってた。
本当は弱い自分を隠したいだけじゃないのかって…。
好きでいれば強くなれるって
勝手に思ってる自分が何処かでいたのかもしれない」
優介が恵を呼ぼうとする前に
恵は立ち上がり、微笑む。
「けど、今は違う。
涙が出た今、気持ちは決まった。
私はもう解放されるって…」
「え?」
「これ以上優兄に関わったら、
お互い苦しい思いをしたまま…。
貴方の孤独を解きたかった…。
ごめんなさい…」
恵は部屋に入り鍵と
カーテンを閉めて座り込む。
泣き叫んだ…。
諦めなきゃ…そう思わなきゃ
駄目なの…もう。
私を知ってる人は一人でいい。
私を救ってくれた…たった一人の人だけで…
また…名前を呼んでしまう。
駄目なのに――――
「優兄ー!!」
この恋を終わらせなければ
私が無事に生きるなんてこと、
出来ないのだから―――…