†君、男~Memory.. limit of grief~

「レイン」


「…」


けど、もう私は優兄を探していない。
もう弱さを隠す必要もない。


それなのに、こんなにも
誰かに強く言われたのならば、
私はどうしたらいい―――…


「前に同じようなこと聞いたと思うけど、
 …レイン、佐伯先生と知り合い?」


「何で?」


「レインしかいないよ。
 佐伯先生のこと、“優兄”って呼ぶのは」



さすが燐―――…


何でそんなに、私の事
知ろうとするんだ。
こんな、汚れた私を、探す必要もないのに。



「駄目だよ…だって先生だよ?
 いくらなんでも―――」


「     」


そう…昔から知っていても、
私が水那高校の生徒であるのならば、
その関係は“知り合い”ではなく、
ただの生徒と先生になるのか…?


どうして、そんな不平等なことがある。


好きなら、堂々としてればいい。
もう、6年前になったあの日以来から
れっきとした知り合いなのに…
今はどうだ?


その関係すら壊れている。


「何も言うな…。
 だから知ったような口を叩くなと
 言ったんだ!!」


「あっ…」


昨日のような鋭い目になる。
燐の動きが止まった。


「何で…そんなような目でしか
 見れないんだ…。
 生徒になる前から、ずっと知っていても
 それは無意味なのか?」



昨日、やっと諦めようと思ったのに。


燐の言葉で、また甦ってくる。
あの時の雨の音を。
優兄を探し始めたあの日を…!
< 126 / 482 >

この作品をシェア

pagetop