†君、男~Memory.. limit of grief~
「レイン」
「…」
けど、もう私は優兄を探していない。
もう弱さを隠す必要もない。
それなのに、こんなにも
誰かに強く言われたのならば、
私はどうしたらいい―――…
「前に同じようなこと聞いたと思うけど、
…レイン、佐伯先生と知り合い?」
「何で?」
「レインしかいないよ。
佐伯先生のこと、“優兄”って呼ぶのは」
さすが燐―――…
何でそんなに、私の事
知ろうとするんだ。
こんな、汚れた私を、探す必要もないのに。
「駄目だよ…だって先生だよ?
いくらなんでも―――」
「 」
そう…昔から知っていても、
私が水那高校の生徒であるのならば、
その関係は“知り合い”ではなく、
ただの生徒と先生になるのか…?
どうして、そんな不平等なことがある。
好きなら、堂々としてればいい。
もう、6年前になったあの日以来から
れっきとした知り合いなのに…
今はどうだ?
その関係すら壊れている。
「何も言うな…。
だから知ったような口を叩くなと
言ったんだ!!」
「あっ…」
昨日のような鋭い目になる。
燐の動きが止まった。
「何で…そんなような目でしか
見れないんだ…。
生徒になる前から、ずっと知っていても
それは無意味なのか?」
昨日、やっと諦めようと思ったのに。
燐の言葉で、また甦ってくる。
あの時の雨の音を。
優兄を探し始めたあの日を…!