†君、男~Memory.. limit of grief~


「うん。この人なら任せられるって。
 でもその通りだよ。
 めぐは会長じゃなきゃ、
 今の私たちのこの形はないもん」


万里は燐達に向かって
大きく手を振る。
恵は舞台にいる優介を見たまま
動かなかった。



『俺が決めたんじゃないんだから』


そう言っていたのに…嘘だったのか。


やっぱり私を壊すため?
諦めさす為…?


でも…もし違うのだったら、
優兄は私の事を気にかけているの?
少しでも仲間が出来るように…
“孤独”を忘れさせるように…


私の事なんて誰も知らなくていいと、
あの時言ったのに…
それでも優兄は私を―――




私の“レイン”の名を名づけてくれた
優兄なら…私が人と接したくないことぐらい
分かってるはずなのに。


唯一他人で私の秘密を知っている
優兄なら――――…




「さて、頑張りますか!」


「うん」


二人は手を叩き合い
気持ちは一つになった。


舞台から引っ込もうとする
優介が一瞬こっちを向いたのを
恵はしっかりと見た。


微かに微笑んでいたのも。



分かってるんでしょ?
私が諦めてないってこと…。



勝てないね、優兄には――…




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