†君、男~Memory.. limit of grief~






「レーイン!」


「うわっ!」


三送会3日前。
登校してきた恵の後ろから
勢いよく飛びついてきたのは朱音だった。


「レインの歌楽しみにしてますから」


ケラケラと笑い肩を叩く。
結菜は後ろで呆れていた。


「ずっとこの調子なんだ。
 いい加減うるさいよ、朱音」


「だって楽しみなんだもん。
 生徒会のライブ」


「まぁ元々人気がある生徒会だしね。
 前の文化祭の時でさらに
 人気上がっちゃってるし…」


浮かれている朱音とは逆に
結菜は恵を心配していた。
ただ恵は二人の会話を聞いて微笑む。


とても和やかな場だった。


「でもさ…もうすぐクラス替えだよね」


さっきまで元気だった
朱音の表情は一変した。
“クラス替え”と言う言葉に動かされたのだ。


「このままがいいな―…
 レイン達と離れたくない」


「そりゃーうちだってそうだけど。
 こればっかりはどーしようもないからね」


「…心配する必要なんてない。
 クラスが変わってもいつでも会える。
 寂しい顔をするな」


「レイン…うん、そうだよね!」


いつも冷静な恵。
二人にとってとても心強い存在に違いない。


けど、そんなこととは裏腹に
恵は誰よりも悩みを抱えていた。




「空が…綺麗」


そう言って恵は窓から
空を覗き込む。



私の過去を知れば
人はどう思うだろう…


可哀想って言うか?



そんな優しいなら言葉なんていらない。



人はいずれ裏切る。
だから誰とも関わりたくなかった。


あの時も、私を捨てた
あの人なら―――…


この気持ちも分かるはずないか…。




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