†君、男~Memory.. limit of grief~







『三送会当日』



「レイン、ちょっといいか」


「井上…」


井上信吾。
以前恵に告白した人物だ。


舞台に向かおうとした
恵に話しかけ足を止めた。


「やっぱお前は他のやつと違うな。
 俺等みたいなやつら、
 相手にするわけないか」


「そんなことない…
 私だって普通の人間だ。
 他の人と同じ生活をしてる。
 ただ…他人の事は
 考えられないんだ」


恵の言葉に押されつつも
めげずに信吾は返事を返す。


「そっか…けど俺はお前に言った
 気持ちは今でもかわんねーから。
 最近のお前元気なかったからさ
 心配してたんだけど、
 もう大丈夫そうだな」


「ありがとう…」


無理に励ます信吾。
自分の気持ちを押し殺そうとするため…。
今の恵と似ていた。



「レイン、急いでー」


燐の声が聞こえてくる。
恵は信吾に「また」と言って駈けて行った。


舞台裏にはすでに
みんなそろっていた。
準備はバッチリのようだ。


「楽しもうな」


慎の掛け声によって
みんなの気持ちは一つになる。
観賞の部で生徒会のライブは最後になっている。
その時が来るまでの間緊張が流れた。



「次は生徒会から3年生に送る
 ライブでーす!
 今、恋をしてる人達に
 是非聴いてもらいたいですね。
 悔いの残らないものにしないと。
 では楽しみましょー!」


司会の合図と同時に
客席は一斉に盛り上がる。
前に座っている3年生のほとんどは
立ち上がっていた。



恵の先頭に慎、燐、亜衣、真、朱鷺が続き
それぞれの持ち場につく。


簡単に音合わせをし、
亜衣が弾くエレクトーンが流れ出した。



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