†君、男~Memory.. limit of grief~

恋咲春今宵



「体育祭…」


恵は体育祭と言う文字が
大きく書かれたパンフレットを見るなり
暗い表情になる。


テスト終了後と共に
体育祭の競技の何に出るかを決めた。
恵は男女混成リレーに
出場することになっている。


「レイン、レイン」


後ろからペンでつつかれ、
恵は振り返る。
ワクワクしているのがハッキリと分かる
朱音の姿があった。


「頑張って1位とろうね」


「朱音、こういうの好きなの?」


「うん!行事は全部好きだよ。
 だって特別なことじゃん。
 思いっきり楽しまないと!
 それにさ…」


言葉が止まる。
朱音は身を乗り出し
恵の耳元で呟いた。


「彼氏が出来たりする
 チャンスなんだよ!」


「はい?」


あまりにも能天気な考えだったのか、
恵はまたため息をついてしまう。
「何で!?」と驚く朱音だが、
恵にはさっぱりだった。




高校に入ってから、
そう言う話が多く出てきている。


それって幸せなこと?
浮かれてしまうこと…?



現実は、そう甘くない。
簡単に行く人なんて、
何の苦労も知らない分類。


平然と笑ってる人は
もっと悪い分類だ。



何時、何処で、どうやって
人は人を好きになったのだろうか…



最初はほんの些細な
事からだったと思う。


ちょっとした事でその人を知り、
知らず知らずのうちに
人はその人を見てしまい、
いつしか好きになってしまう事がある。


そっから、幸せか不幸か
2つの選択でしかない物語が始まっていく。



幸せを見つけた人は
それを手放さないように掴み、


不幸を見つけた人は
早く持っているものを手放したくなる。



私の場合―――…

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