†君、男~Memory.. limit of grief~


「失礼しまーす!
 佐伯先生いますか?」


「いないけど…何か用?名前は?」


「2年6組北瀬麻耶。
 先生に頼まれてた物運んできたんです」


「そっか。じゃぁその辺置いといて。
 後で俺から行っとくから」


「はい」


笑顔で返事をし、
持っていた荷物を椅子の上に置く。
麻耶は生徒会室を見回した。


「生徒会室って始めて来ましたけど、
 すごい綺麗ですね」


「そう?ありがと」


パソコン2台に長いテーブル。
床はフローリングと言った普通の人は
絶対入れない生徒会室。
憧れの目で見る麻耶はふと恵の方に目をやった。


「1年で会長に選ばれた蒼井恵さん。
 さすがオーラが違いますね」


「…」


「誰もが憧れるわけですよ。
 では、私はこれで失礼します」


一礼して生徒会室を後にする。
足音が聞こえなくなったところで
恵は持っていたシャーペンを
思いっきり机に刺す。
二人は一気にその恵に注目した。


「れっ…レイン…?」


「もしかして、さっきの子
 嫌いとか?」


「…何かご不満でも?」


冷たい目で慎を見る。
二人とも固まってしまった。
それでもめげずに慎は口を開く。


「俺もあーゆーのは苦手だけどな。
 何か狙ってる笑顔だし」


「…」細い目で慎を睨み付け。
恵は立ち上がりゆっくり慎に近づく。
少し後ずさった慎に手を差し出した。


「さすが都宮先輩。見直しました」


「え?」


気が抜ける一言。
今まで緊張していた燐も
胸を撫で下ろした。



「…すいません、
 ちょっと出てきます」


恵はそう言って生徒会室から出て行った。
残された二人は深いため息をつき
まるで嵐が去った後のように疲れきっていた。




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