†君、男~Memory.. limit of grief~
「違う…かな。
レインは昔からの知り合いだろ。
生徒なんて思う前に
一人の女性として思うだろうな」
“一人の女性”か…。
そんな言葉、私は素直に
受け止めてしまうのに――…。
きっと抑えられない…
好きになっていく。
「そんなこと言えば
何もかも思い出して悲しくなる。
昔のことは思い出したくないのに…」
「…そのうち思い出さなくなる」
「私はまだ知らない。
優兄の過去の事。
何で、孤独が憎しみに変わったのかも」
風が止み、辺りは静かになった。
桜は舞うのではなく、散って行く。
「今の桜のように、
俺も…散った時があったんだ。
信じる事すら出来ない」
「…私も、だけど?」と恵が言えば
優介は「俺より強いって」と笑ったて言っていた。
桜が導き出した儚い言葉。
“信じる事すら出来ない”
貴方は私に信じろと言っていたのに、
私よりずっと強いはずなのに…
弱い姿を映すことが出来ないのは
きっと本当の弱さを知ってしまったから―――…