†君、男~Memory.. limit of grief~
recollection
久しぶりに屋上に行こうと思って
その場所に端を踏み入れたら、
そこには悲しい顔をしたレインがいた。
珍しく身を小さくして、
まるであの時のように―――…
普通に生活していた俺に
訪れたあの日。
それがレインとの出会いで…
俺が始めて弱さを言える人でもあった。
今とは違う本当のレインの姿、
それでもレインには秘密があった。
レインの脳裏からもう薄れてきているかもしれない。
けれど、決して完全に忘れることのない、
ただ一つの記憶。
俺がつけた“レイン”の名前が
消えない限り、その記憶はあり続ける。
あんなに嫌がっていたその名前ですら、
今は誰もが使ってる。
本当はずっと言われたくない名前。
けど、それじゃぁいつまでたっても
レインは闇から抜け出せないまま。
時に冷たくして、突き放せば
強くなれると思った…。
でもそれはただ
苦しめてただけかもしれない。
俺なんかを呼んで、見つけても
何にもないだろう――…?
「…ッ」
もっと早く、気づいていればよかった。