†君、男~Memory.. limit of grief~





「    !?」


誰かに呼ばれたように思えた恵は
辺りを見渡す。
しかし部屋には恵一人だけだった。



「…きのせい?」


違う。きのせいじゃない…。
振り返って辺りを見渡しただけで
額から汗が出るわけがない。



なら、今の声は誰―――…?



「いっ…!」


突然の頭痛に恵は
その場に倒れこむ。
頭を抑え、もがき苦しんでいた。


耳鳴りが起こり、
数秒で痛みは治まる。



「はぁ…はぁ…」


今まで息をしていなかったかのように
荒く呼吸をし、ゆっくり体を起こす。
片手は床につき、重心を支え、
もう片方の手は頭を押さえる。



どうして急に頭痛が…?


さっきの声と言い、
私の頭の中で何かが動き出してる。



「優兄…」



会いたい。貴方に会いたい。




会いたい…!




「助けて…」



一体、何度涙を流すのだろうか…


苦しくて辛くて寂しくて、



“誰かを
 本気で好きになったことありますか”



今の私は、本気だから…
こんなにも悲しいの―――



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