†君、男~Memory.. limit of grief~


「何であの女あんなにも
 先生に引っ付くのかなー!」


一人考える燐は
さらに麻耶に腹を立てていた。


箸をご飯に突き刺し、
お弁当に八つ当たりをしていた。
そんな時後ろから麻耶が顔をのぞかせる。


「燐ちゃん!」


「うわっ!!」


驚きのあまりベンチから落る。
お弁当は何とか無事のようだ。


「急に出てきたら驚くじゃんか」


「エヘヘ、ごめんね。
 一人で食べてるなんて珍しいから。
 何か浮かない顔だったし」


「(あんたのせいなんだけど…)
 で、何か用?」


お弁当を食べながら
適当に質問する。
早く逃げたいと思っていたのだ。


「燐ちゃんって、
 蒼井さんと仲いいよね」


「まぁ…中学の時から
 一緒だったし」


「じゃぁお互いの事
 だいたい知ってるよね!」


手をパンと叩き、
嬉しそうに微笑む。


「蒼井さんって好きな人とか
 いるのかな?」


「…さぁ」


隠そうとするのが丸分かりだ。
ニヤリと笑う麻耶は何かを悟った。


「そっかー…もったいないよね。
 もてるのに」


「そーゆー北瀬さんだって
 人気あるじゃん。
 今は誰とも付き合ってないみたいだけど、
 北瀬さんの方は好きな人いるの?」


後になって後悔したその質問。
麻耶は燐に背を向け
中庭(円)の中心に立つ。


「そりゃー好きな人ぐらいいますよ。
 今まさに頑張ってるもん」


「―――…それって」


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