†君、男~Memory.. limit of grief~



放課後。



「…イン…レイン」


「…ッ」


恵は目を擦りながら
起き上がる。


どうやら屋上に行く階段で
いつの間にか寝ていたようだ。
それを優介が起こす。


「お前何こんなとこで寝てるんだ。
 仕事はたくさんあるぞ」


書類を恵に差し向けるが
まだ完全に起きていない恵は
書類を見てボーッとしていた。


「何でココで寝てたんだよ」


「人通りが少ないし、
 この階段なら壁があって
 人目も気にせず寝れるからだ」


眠そうに欠伸をして立ち上がる。
優介から書類を受け取り
階段を下りようとすると、
腕を優介に掴まれ


「ストップ」と言って止められた。



「最近疲れてんのか?
 レインがこんなとこで寝るなんて
 めったにないことだと思うけど」


「…疲れているのかもな。
 ストレスも溜まっているようだし」


「ストレス?」


ふーん、と軽く頷く。
恵は寝起きで不機嫌なのか
手を振り払い再び歩き出す。


「なら今度の日曜日
 俺がいいとこ連れてってやるよ」


「…いいとこ?」


「昔の懐かしき場所…とでも言えば
 分かりやすいだろ」


「…」考える恵だが
何も言わず生徒会室に戻っていった。


誰もいなくなった廊下で
優介は壁にもたれため息をつく。



「疲れてんのは、
 俺の方かもな―…」



どうしていいか分からない…


そんな考え、いつ以来だろうか。



こんなにも悩み始めたのは
きっとレインと出会ってから。



今まで気づかなかったから、
余計――…



どうしていいか、
分からないんだ…。

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