†君、男~Memory.. limit of grief~







金曜日の放課後。
今日も生徒会の仕事で
生徒会室に集まった役員の人達。


それぞれ作業をしていく中で
燐は何故かそわそわしていた。


「燐…落ち着け」


「えっ!」恵に言われてハッとなる。
周りも燐に目を向けた。


「何でもないです!」


左右に思いっきり首を振り、
そそくさと作業を開始する。
恵もフゥ…と肩の力を抜き
手を動かし始めた。


30分ほど経った時である。
扉の開く音と同時に
大きな声で「蒼井さんいますか?」と言う声が聞こえた。


「お前…!」


「北瀬さん!」


恵が立ち上がる前に
燐は先に立ち上がって唖然となる。


先日の麻耶の一言。


『宣戦布告は本人に言うから』


その予想通りになってしまうことを
すぐに察知したからだ。



「何か用か…?」


「挑戦状を言いに…ね」


クスッと笑って恵に近づいていく。
目の前に来たところで
恵の耳元で小さく呟いた。


「佐伯先生は、貴方なんて
 興味ないよ…きっと」と…。


「―――…」



「まぁそれ以前に私が 
 貴方に負けるわけないですしね」


気味の悪い表情をし、
ウインクをする。


再び扉の開く音が聞こえ、
今度は優介が入ってきた。


「北瀬?こんなとこで何してる」


「ちょっと告知をしにきただけです」


「告知?」


「はい!でももう終わりました。
 先生、さようなら」


笑みを浮かべ生徒会室を出ようとする。
出る瞬間、恵の方を向き
企みの顔を見せ、出て行った。


恵にとってかなりのダメージだ。
無表情だったが心の中は
苛立ちでいっぱいであっただろう。


誰もがそれに怯え、
何も知らない優介だけが
平然と話を始めた。



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