†君、男~Memory.. limit of grief~



「レイン…?」


「どんなに昔の場所があっても、
 昔の私は存在しない。
 考え方だって変わってるのに…分からない。
 どうして優兄が罪に塗れてるのか、
 寂しさを憎しみに感じてるのかも…
 分からない…!」



「どうして私を生徒会長に 
 推薦したの…?」


「…ッ」


何も言わない優介に
恵の感情は強くなる。


「私を試してるんでしょ?
 壊してもまだ探してる私を…
 そうなんじゃないの?」


恵は優介の服を掴み、
声を張り上げて言った。


「貴方を想う事って
 そんなにいけないの?
 罪を持つから…?」


「違う!」


「      」


優介は恵を抱きしめた。
太陽が徐々に昇り始める…。


「俺がレインから離れていったからだ。
 俺の方が罪を持ってる。
 …自分一人で全ての責任を
 背負おうとしてるお前が、羨ましかった。
 レインは何も悪くない。
 お前を寂しい思いにさせたのも、
 無理に離そうとしてのもすべて俺だ。」


「どうして…そんなこと」


震える恵の声。
涙が溢れ出していた。
 
 
「レインが俺を探してなければ、
 ずっと俺は憎しみを抱いたままだった。
 ありがとう―――…」


「      」


その“ありがとう”という言葉が
どうして出たのか分からなかった。


私は何もしていないのに…



「優兄は、何も罪を持ってない。
 私と一緒にいてくれた。
 私の孤独を忘れさせようとした…
 誰も私の事なんて知らなくていいと思ってた。
 たった一人優兄は私を――…」


「ごめん…」


恵の言う言葉を遮って
優介は言う。
何のことだか恵にはさっぱりだ。


抱きしめる手が強くなった。



「そんなんじゃ…ないんだ」


それ以上優介は何も言わなかった。
恵も、訊くことをしなかった。



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