†君、男~Memory.. limit of grief~


“そんなんじゃ…ないんだ”



どういう意味だったのだろうか…。



恵はその言葉の意味を知ることなく、
優介との距離も開き始めていた。


担任でないだけに普段は会わないし
生徒室に行ったときでも
なるべく優介と会わないようにしていた。


体育祭2週間前。
ぎこちない二人に燐は気づき始める。



「佐伯先生…一つ訊いていいですか?」


「?」


今現在生徒会室には燐と優介の二人だけ。
他の人達は見回りや飲み物を
買いに行ったりなどみんな出ていた。


「レインと、何かあったんですか?
 最近様子が変だし」


「…別に何もないが」


一瞬手の動きが止まった優介だが
何もなかったように動かす。
燐は「うーん…」と目を細めた。


「何も隠してませんよね?」


「…何で隠す必要があるんだよ。
 気になるなら本人に訊けばいいだけのことだろう?」


「そうだけど…」


言うのを止めた燐は
仕方なく席を立ち、生徒会室を
うろちょろして気を紛らわそうとしていた。



「私、勘は良い方ですよ?」


「知らなくても良い事だったある。
 あんまり調べないことだな」


「…はーい」


その後二人の会話は途絶え、
燐も生徒会室を一通り見た時である。




< 164 / 482 >

この作品をシェア

pagetop