†君、男~Memory.. limit of grief~
“そんなんじゃ…ないんだ”
どういう意味だったのだろうか…。
恵はその言葉の意味を知ることなく、
優介との距離も開き始めていた。
担任でないだけに普段は会わないし
生徒室に行ったときでも
なるべく優介と会わないようにしていた。
体育祭2週間前。
ぎこちない二人に燐は気づき始める。
「佐伯先生…一つ訊いていいですか?」
「?」
今現在生徒会室には燐と優介の二人だけ。
他の人達は見回りや飲み物を
買いに行ったりなどみんな出ていた。
「レインと、何かあったんですか?
最近様子が変だし」
「…別に何もないが」
一瞬手の動きが止まった優介だが
何もなかったように動かす。
燐は「うーん…」と目を細めた。
「何も隠してませんよね?」
「…何で隠す必要があるんだよ。
気になるなら本人に訊けばいいだけのことだろう?」
「そうだけど…」
言うのを止めた燐は
仕方なく席を立ち、生徒会室を
うろちょろして気を紛らわそうとしていた。
「私、勘は良い方ですよ?」
「知らなくても良い事だったある。
あんまり調べないことだな」
「…はーい」
その後二人の会話は途絶え、
燐も生徒会室を一通り見た時である。