†君、男~Memory.. limit of grief~
「にしてもさー…
ちょっと聞いてよ」
「どうした?」
いつしか愚痴を言い始めた朱音。
話を聞いていた恵の耳に飛び込んできたのは
「北瀬さんが迷惑で」という発言だった。
「あー…あの子か」
「結菜も知ってるのか?」
嫌そうな顔をした結菜に
顔を覗き込んで恵は訊く。
「聞いた話なんだけど、
結構いろんな男子と付き合ってたらしく
最終的には北瀬さんから降るみたい。
何でも情報が手に入ったらとか…」
「情報?」
「あっそれ聞いたことある!
男子は教えてくれないんだけどね、
最近では佐伯先生にべったりだし。
かなり邪魔なんですけどー」
ブーと頬を膨らませ
朱音は持っていたプリントで
だよね?と結菜の方を叩く。
一方の恵はだんだん
青ざめてきていた。
「どうしたのレイン?」結菜が尋ねる。
「何のために集めてんだろ…
その情報」
「さぁ―・・・でも噂だし、
本当かどうか分からないからさ。
先生に付きまとってるは
確かにうざいけど」
「そう…結菜、早くパン買いに行かないと」
「あっそうだった!」
自分が何しに来たのかを思い出し、
朱音と別れて二人は
慌ててパンを買いに行った。
三人が話していた上の渡り廊下では
三人の会話を麻耶はしっかりと聞いていた。