†君、男~Memory.. limit of grief~


「森村」


「あっ佐伯先生」


先に教室に戻った恵。
残された朱音と結菜は
ちょうど食事を終えたところだった。


「蒼井は一緒じゃないのか?」


「教室に戻りましたよ」


「そうか、なら後でにするか…」


振り返って帰ろうとした時、
朱音は優介を呼び止める。


「先生は彼女いるんですか?」


「は?何だ急に」


「いやいや、気になっただけですよ。
 先生もやっぱ
 悲しい恋とかしてきましたか?」


「悲しい恋ねー…」


優介は腕を組み考え始める。
朱音達は期待十分だ。



「そうだな―…
 あると言えばあるけど」


「えっ!教えてくださいよ」


朱音が揺さぶりをかけたとき
予鈴が鳴る。


「残念だったな。
 そう簡単に教えるわけには
 いかないんでね」


「ケチですね―…
 レインも教えてくれなかったんですよ」


「蒼井にも同じこと聞いたのか?」


「はい。あっそろそろ行かないと
 次のチャイムが鳴っちゃう、
 結菜走るよ!」


優介を残し、
二人は急いで教室まで
走って行ってしまった。


残された優介は
近くのベンチに座り空を眺める。




レイン―――…


お前は今もまだ
あの日のことを覚えているのか?



残虐の後を今でも…
見つめているのか―――?



もう、見てほしくないんだ。



氷のように解けた心が
叫ぶ声を通らせる。



何が二人を導いた。


何を持ってレインを
悲しませるんだ―――…




俺は、綺麗事でしかない
哀れな人間だ。




「レイン、さっき
 佐伯先生が探してたよ」


「私を?何の用だろ」


5時間目の授業中
コソコソと話し合う朱音と恵。


「ところでさ、
 佐伯先生にも恋してたか
 聞いたらさ、教えてくれなかった。
 チャイム鳴ったせいもあるけどね。
 ちょっと残念だよー」



「え――――…?」


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