†君、男~Memory.. limit of grief~
ドン!!
勢いよく走ってきた恵は
誰かとぶつかりその反動で
転倒してしまう。
起き上がる事には
後ろで「大丈夫?」と言う声が聞こえた。
「燐…?」
「えっレイン!?」
振り返った恵が見た姿は
燐だった。
慌てて燐は恵を起こす。
「レイン?どうした――… 」
恵は燐にしがみつく。
俯いたまま服を掴み、
その手は震えていた。
「雨なんて嫌い。
レインなんて…嫌い」声がかすれていた。
「夕日も雨もレインも…
みんな嫌いよ!
私の大切なもの全て
奪っていくんだから」
「ちょっ一体何があったの?」
「嫌い…大嫌いだ」
「 」
いっそのこと全て奪ってよ。
私の記憶がなくなるぐらい
全て奪ってよ…!
私を隠す“夕日”
私と人との距離を作る“雨”
私を支配する“レイン”――…
みんな嫌いだ。