†君、男~Memory.. limit of grief~
「めぐちゃん、進路の事だけど。
私もお父さんもめぐちゃんが
やりたい事を望んでるの。
だから焦らずゆっくり考えてね」
「…ありがと」
階段で会話する二人。
重い空気の中、二人は門で別れ
恵はそのまま生徒会室に向かおうとしていた。
「蒼井先輩」
後ろから声をかけられ、
振り返るとそこには見慣れない生徒か
目を輝かせて恵に近づいてくる。
警戒しながらその子を見て
「誰?」と言う。
その生徒は笑ってこう言った。
「土藤 健吾(つちとう けんご)1年生です。
生徒会役員に推薦されまして」
「へー…」
興味のない返事。
恵にってもうそんな時期かと思うぐらいだった。
「蒼井先輩みたいに
会長を狙ってるんですけどねー」
「…無理だな」
恵は少しも表情を変えず
淡々と告げた。
「悪いが譲るつもりはない。
狙うなら私が生徒会を止めた後にしろ」
強い言葉を放った後
健吾は笑い始める。
恵は少し目を細めた。
「さすが蒼井先輩。
思ってた以上にすごいんっスね。
完璧ですよ」
「完璧?この世に完璧な人間など
いるはずないだろ…。
弱さを隠してるだけだ」
「じゃ―…蒼井先輩も
何か弱いとこあるんですか?」
恵は毅然とした態度で言う。
「お前に言う必要などない。
悪いが私はもう行く。
次に会うのは任命式の日だ…」
冷却な空気を出すかのように、
恵は生徒会室に入っていった。
健吾はまるで背中が凍っているかのような
何か恐ろしい感覚に囚われていた。
「さすが会長…」