†君、男~Memory.. limit of grief~


「蒼井」


ST終了後、
帰ろうとする恵を呼び止める優介。


「体育祭のことで話があるんだが」


「……」


「蒼井?」


「あっすいません。
 ボーっとしてて…」


慌てて切り替え、
聞く体制に入る。


優介が話し終わったときには
クラスに誰も残っていなかった。



「分かりました。
 じゃ帰りますね」


「あっ蒼井」


「はい?」


「俺は優しい人間じゃないって、
 お前は知ってるよな…」


「――――…。
 何言ってるんですか急に、
 そんなこと私に聞かないでください」


恵は俯いたまま教室から出て行く。
階段を駆けていく音が響いた…。




「あれ、佐伯先生
 まだ残ってたんですか?」


「あ―…すいません。
 いろいろ考え事をしてまして」


あれから優介はずっと教室にいた。
気がつけば8時を回っている。
慌てて用意をして教室を出て、
管理人の人は鍵を閉めた。



「佐伯先生にしては
 珍しいですね。
 何を考えてらっしゃんたんですか?」


「昔のことですよ。
 ちょっとありましてね」


「昔のことですか。
 それは何か深いですね」


「えぇ…まぁ」


曖昧な返事をして
その話を終わらせる優介。
あんまり聞かれたくなかったのだろう。


聞かれるたびに
心臓の音が聞こえる。




本当は今もまだ、
あの声を忘れてはいない――…


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