†君、男~Memory.. limit of grief~




「レイン、こんなとこで何してんだよ」


「都宮先輩…」


放課後の中庭。
ボーっとベンチに腰をかけていた恵に
ひょっこり顔を出す慎。
ちょうど生徒会室に向かうところだった。



「先輩は今日で生徒会の仕事
 終わっちゃうんですね」


「まーな…。もう仕事出来なくなって思うと
 やっぱ少し寂しいな」


「そーゆーもんなんですね…。
 正直言って私、最初は生徒会なんて
 入る気全然なかった。けど今は…」


「この位置を離れるのが寂しい」


「え?」


いきなりのさえぎりに戸惑う恵。
まさにその通りだったからだ。


小さく頷いく姿に
慎はプッと笑い、それにつられて恵も微笑む。


「きっとこの場所はレインを
 支えてくれるもんになる…絶対な」


「…そうですね」


しばらく会話を続ける二人。
すると慎は突然「あっ!」と何かを
思い出したように声を出し、立ち上がる。


「先輩の俺等が頑張ったお礼に
 何かせんべつもらわねーと」


「は?」


うーん…と唸り始める慎。
ふと恵の方を向き「生の歌が聞きたい」と言い出した。


「レインの声だけの
 オリジナル曲が聞きてーんだけど。無理?」


「…別にいい。今思いついた」


一瞬間をおいて慎は驚く。
そんな早く?と心配そうにする慎の横を
素通りし、中庭の中央に立つ。


< 190 / 482 >

この作品をシェア

pagetop