†君、男~Memory.. limit of grief~
夏休み
北海道-夕日のオブジェ-
「北海道?」
「そうなの。商店街の
くじ引きで1等を当てたのよ。
めぐちゃんも行くわよね?」
ある日の夜。
ご飯を終えた後で
恵の母親は嬉しそうに
チラシを見せてくる。
恵はそれを受け取り
目を通した。
北海道4泊5日――…
少しこの場所から離れて
ゆっくりするのも悪くないかもしれない。
「いいよ、行く」
8月1日から6日までの旅行。
恵は少しでも今の苦しみから
解放されたかったのだ。
部屋に戻り、明かりもつけず
別途に倒れこんだ恵は
携帯のデスプレィを見る。
優介からの連絡は
当然のことながらない。
会えない寂しさを無理やり押し殺して
毎日を過ごしていた。