†君、男~Memory.. limit of grief~

残陽の残り



「いけっー!!」


本日、晴れ晴れとした天気の日
水那高校では体育祭が行われていた。


応援に燃える朱音、
誰よりも声が響いていた。



「レインの出る混成は
 お昼前だね。
 応援しとくから」


結菜が横で励ます。
レインはどうも浮かない顔だ。


「大丈夫?何か顔色悪い」


「あ―…ごめん。
 ちょっとトイレ行って来る」


恵は席をはずし、
逃げるようにその場から立ち去る。
後に、朱音も恵が気づき、
心配そうに結菜と話をしていた。



「(…何か嫌)」


上手く接することが出来ない
自分が今ある。


何で――…



『俺は優しい人間じゃないって、
 お前は知ってるよな…』


先日言われたあの言葉。
貴方は何をもってそんなことを言ったの…


鎖は繋げないと、
分かってるくせに…



「蒼井ー、
 もうすぐお前の出番だろ?
 こんなとこで何してる」


優介だ。
恵は目をそらしながら
返事を返す。


「…別に何もない」


「せっかくの体育祭なのに
 元気ないぞ」


「そんなことありません。
 いつもと変わらな――…」


恵の頭をポンと抑える。
その状態で同じ目線にし、話し始めた。


「体育祭終わったら教室残っとけ。
 いい物見せてやるから」


「いい物?何ですかそれ」


「それは秘密だろ。
 楽しみしとけよ」


持ち場に戻って行く優介。
恵も慌てて混成の準備に向かった。


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