†君、男~Memory.. limit of grief~


「ここはまだ山ん中だからな…
 俺達が住むとこよりかは
 見れると思うわ。
 これが終業式の日に言った良いモノ」


「色が好き…」


「え?」


「暗い空に浮かぶ白色…
 そういう色合いって
 なんとなく好きだ」


恵は足を伸ばし左手を
夜空に向かって伸ばした。


「去年もこんな風だったの?」


「そうだなー…でも一人で見るより
 こうやって誰かと見た方が
 綺麗に見える」


「―――…優兄」


「ん?」


「最近、誰かの声が聞こえてくるんだ。
 1回目は私の家の絵の部屋で、
 2回目は北海道に行った時…。
 2回とも同じ女の人の声だった」


「その声、聞いたことないのか?」


優介は恵の顔を覗き込む。
少し潤んだ目は星のように光って見えた。


「分からない…けど、
 何処かで聞いたことがあるような気がする。
 でも誰の声か思い出したくない。
 知ろうとすればするほど
 呼吸が出来なくなったり耳鳴りがする」


「…」


優介は黙る。
恵が優介の方を向くと
顔を逸らされた。
恵はそのまま黙って目を瞑る。



「前に優兄、自分の方が
 罪を持ってるって言ったよね?
 …優兄の過去を知る時が来た時、
 私の秘密も燐達に知られてしまいそうな気がする」


「…ッ」


「だから私を突き放そうとしたの?
 私の事、誰にも知らせないために…
 本当は守ってくれてたの?
 それとも、試しただけ?」


「…レイン」


恵は横に倒れ、
優介の肩にもたれかかる。



「私が人や何かに対して
 憎む気持ちが消えることなんて、
 きっと無理だよ――…」



無理なの――――



貴方なら、分かるよね?


私の名前をつけてくれた貴方なら。



それとも貴方の言う罪って
こういうことなの――――…?





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