†君、男~Memory.. limit of grief~

「レイン!大丈夫?」


朱音が駆けつける。
かなり心配していたようだ。
恵は「大丈夫」と言い、列に並ぶ。


応援はすごかった。
得点が多いということもあっただろうし、
午前の部最後の競技ということもあったからだろう。
決勝に出るために3位以内に入らなければならない。


恵達のクラス、1年2組は2位になった。
クラス全員大喜びしている。


午後の部も終わり、
それぞれ朝食をとり始めた。


恵達はいつものように
中庭のベンチに座って食べていた。



「決勝出れてホント良かったね。
 午後も頑張ろう」


「レイン走るの早いんだね。
 2人も抜かしてたじゃん。
 中学のとき何部だったの?」


「美術。陸部も一回誘われたけど、
 別にそこまでしてやりたくなかったし」


「へ―…もったいないなぁ。
 あっじゃぁ今度絵見せて。
 レインの描いたやつ見たい」」


朱音は期待十分に
恵の手を掴んで目を輝かせる。
「いいよ」と言った直前
朱音は立ち上がって喜んだ。


「なら今度家に遊びに来る?
 絵を飾ってる部屋があるから」


「えっそんな部屋あるの?
 行きたい行きたい」


「是非見たいよ」


結菜も朱音につられて
嬉しそうに笑った。


「じゃ、私先に行くから。
 また後でね」


恵は立ち上がり、
校舎に戻っていった。




「レイン」


「…?」


教室の前で呼び止められ、振り返る。
恵を呼んだのは同じクラスの井上 信吾。
彼もまた恵をレインと呼ぶ一人だ。


「ちょっと話があるんだけど、
 いいかな?」


「…」


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