†君、男~Memory.. limit of grief~
「悪いな、急に呼んだりして」
「別に」
校舎の裏に連れてこられた恵。
後ろに手を組み、信吾を見る。
こういう展開は何回も経験している。
校舎の裏は定番なのだろうか…
「入学した時から気になっててさ、
よかったら付き合ってほしいんだ」
「…」
――今まで、こういう言葉を
何回言われただろうか…。
その言葉が本当だと
信じることが出来なくて、
私は苦しむだけなの―――
「ごめんなさい」
「…そっか。
他に好きな人とかいるの?」
「いない。今はそういう
気持ちとかもてないから…」
「じゃぁ…まだ可能性はあるってことだ」
え?と言うような表情になり、
恵は唖然とする。
信吾は恵の手を掴み、振る。
「まだ諦めたつもりじゃないから。
これからもよろしくな」
「ちょっ…!」
恵の言葉を聞かず
信吾は走り去っていった。
ため息をつき、しぶしぶ
グラウンドに向かう。