†君、男~Memory.. limit of grief~
「結菜!」
「朱音…?」
息を切らした朱音は
ちょっと待ってと手を広げて前に出す。
結菜は朱音が話す前に話し始めた。
「レインが悩んでるのに私って
何にも役に立たないのかな?」
「ゆい…な」
結菜の目が一瞬光る。
涙が出てきていたのだ。
「2年も一緒にいるのに
何も出来ないなんて…
正直悔しいよ」
「…私も、だよ結菜」
二人は俯く。
朱音も涙を零し始めた。
「悩んでるのに…ただ
見てるだけしか出来ないなんて
悔しいよ――…ッ」
「こんなに一緒にいても
レインの事何も知らないんだね…私ら」
風が吹きぬける。
風が木立の葉をそよがせていた。
けれど二人にとってその音は
とても寂しく感じられていた…。