†君、男~Memory.. limit of grief~

After dawn


「…」


ゆっくりと目を開けた恵。
どうやら今まで寝ていたようだ。


見覚えのある部屋…。
横では優介が椅子に座って恵を見ていた。


優しく声をかける。「大丈夫か?」


「私…また倒れたんだね。
 ここ、優兄の部屋?」


「あぁ、レインの家に電話したら
 明日から出張だって聞いて…。
 それでここなら俺も看病できると思ってさ、
 着替えだけ預かってきたから」


恵はため息をつく。
怯えた声で言う。


「夢であってほしいと…
 倒れた時から思ってた。
 でも、全て現実なんでしょ?」


「…あぁ」


「少し…一人にさせて」


そう言って目を閉じる。
仕方なく優介は席を立ち
静かに部屋から出ていった。


扉の音が閉まると動じに
恵は目を開け、体を起こす。


窓の方に目を向けた。


電気がついていなかったこの部屋は
明かりがついている部屋から
夜空を見るより、月が綺麗に見えていた。

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