†君、男~Memory.. limit of grief~



恵は優介の部屋の引き出しを捜して
ある名刺を見つけ出していた。
宮原精一と確かに書かれた名刺。


住所も書いてある。
ここに“あの女”がいる。
そう確信して恵は無我夢中で走る。


見慣れない街。
まるで別世界に来たようだった。



「ここ…か」


バスに乗り、電車に乗り、
休むことなく走り続けた恵の体力は
限界に達していた。
風邪も完全に治ってないまま飛び出したから余計に…。



着いた場所。確かに“宮原”と書かれた家。豪邸だ。
まだ息切れで呼吸も乱れたまま
インターホンを押し、
「はい」と聞こえると同時に恵は声を張り上げる。


「蒼井恵が来たと、
 宮原精一に伝えてもらいたい…今すぐに」




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