†君、男~Memory.. limit of grief~
頷く精一。
力を入れていた恵も気が抜ける。
「必死で探したけど、
見つけることが出来なくてね…。
やっと恵を見つけたのは3年後だった」
「―――…私が
優兄と会った年?」
精一は何も言わず微笑む。
恵は歯をかみ締めた。
「なら何故すぐ私に会わなかった!
どうして優兄に私の事を任せたんだ!
なんで…今になって会いに来た…ッ」
「本当は会いたかった。
でも私たちに会う資格などはなかった…。
けど、今になって会おうと決めたのは
恵が水那高校にいたからだよ。
レインのお姉さんの子供が水那高校に
通っていてね、調べてもらってたんだ。
レインはずっと昏睡状態のまま…
どうしても会ってもらいたかった」
「…ッ」
ポタポタと床に落ちる涙。
恵はそれを拭き取りながら言う。
「私の事、考えてたの?」
「自分の子を忘れるわけないだろう?
レインも言葉には出さないが
ずっと恵に会うことを望んでいたよ」
恵は溢れる涙を全て拭き取り、
意を決した強い目で精一を見た。
「会わせて…」そう一言言い、
精一は恵をある場所へと連れて行った。
レインが眠る場所へ…。