†君、男~Memory.. limit of grief~



「…ッ」


「えっ?」


レインの手が少し動いたように見えた恵。
さらにレインに近づいた。
レインの目はゆっくりと開いていく…。
そして聞こえるかいなかの声で
「恵…?」と呟いた。


「レイン!?」


精一は慌てて駆け寄り
レインの手を掴む。
何度も瞬きをするレイン。
首を左右にゆっくりと動かし辺りを見渡す。


「恵…なの?」


「うん…」


恵の顔を確認したのか、
レインの目からは涙が溢れ出していた。


「恵なのね…
 本当に…ッ」


震える手。
そっと恵の頬に触れる。


「ごめんなさい…。
 何度謝ってもこの罪は
 決して許されるものじゃないわ…ッ。
 けれど眠っている間、貴方が泣いている姿
 何度も見たの…。私たちのせいで
 悲しい思いをさせてしまって、
 本当にごめんなさい…!」


「…もういいよ」


頬に触れる手に触れ、
恵も涙を零した。


「ずっと、私を呼んでたんだね…。
 ちゃんと、届いてる。
 私…私を捨てた貴方が嫌いだった。
 レインの名前が頭を支配して、
 すごい憎かった…けど、
 もっと…一緒にいたかったな…ッ」


「…ッ恵」


レインは恵を強く抱きしめる。
レインは何度も「ごめんなさい」と
恵の耳元で言っていた。




< 258 / 482 >

この作品をシェア

pagetop