†君、男~Memory.. limit of grief~


「…」


その頃恵は中庭の
中央にある、ベンチで縁を作った
その真ん中に立ちすくんでいた。



『私はそんな言葉いらない。
 貴方を見つけたいだけなの』


『…俺は5年前から
 何も変わってない。
 レインに対しても、だ』



分かってる。分かってた…。



なのに――――…



「レイン?」


「   燐!?
 どうしてまだ学校にいる…」


「あ―…体育委員で
 片付けとか話し合いしてたの。
 レインこそ何でここにいるの?
 てっきり総合3位だったから
 体育館にいると思ってた」


今まさに帰る途中だった燐。
立ちすくんでいた恵を見つけ、
二人は何も言わずベンチに座る。


恵は体育座りで俯く。


「体育館行かなくていいの?
 せっかくの打ち上げなのに」


「いいの…今はここにいたい」


「何かあったの?レインらしくない」


「…ッ」

 

どうして頭から離れないの…?



忘れたはずだったのに―――



「…レイン!」


恵の体は震えていた。
燐は恵の顔を覗き込む。
泣いていた…。


「レイン!どうしたの!?」


「何でも…ない…ッ」


「何でもないわけないじゃんか。
 一体何があったの?」




私の気持ちも5年前から
何も変わってない。


私はまだ、
貴方を追っている――…


見つからない貴方を
私は追ってるの―――…!





恵は燐にしがみつく。
涙を流したまま一言も喋らなかった。




こんなにのも…


私はまだ貴方のことを
想っているなんて――…





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