†君、男~Memory.. limit of grief~

聖夜の鐘



「レインが施設の子――…?」


次の日の学校。
風邪も完全になった恵が決意した事。
それは燐に全てを言う事だった。
恵が施設にいたこと、レインという名の由来も…。


生徒会室から飛び出したあの日、
そこ場にいた朱鷺、慎にも伝えた。
昼休みの中庭で3人は唖然としていた。


「前に燐に私は人や何かに対して
 憎む気持ちが消える事はないって
 言ったの覚えてる?」


「うん…」


「あれも全てこのことからなんだ…。
 人の心なんて簡単に崩れるから、
 捨てられた時の事なんて覚えてる
 わけがないが、体が覚えてるんだ。
 感覚が…忘れさせてくれない」


3人は息を呑んだ。
鋭い恵の視線が心を痛ませる。
恵はさらに話を続ける。


「私が燐にこのこと言わなかったのは
 言えば私から離れていくと思ったから…。
 こんな汚れた私は傍にいない方が――」


「そんな事ない!」


ようやく燐は口を開く。


「私がレインから離れていく分けないじゃん。
 もちろん須藤や、都宮先輩も。
 レインが醜い?ありえないよ。
 レインは汚れてなんかない。
 立派に磨かれた心の持ち主なんだから」


燐は手を差し伸べ微笑む。
朱鷺や慎も笑みを浮かべた。


「私嬉しいよ…。
 レインが自分の事話してくれたから」


「―――…」


そっと恵は燐の手を掴む。
勢いよく燐は恵に飛びついた。


「レインは私の一番
 大切な人だからね!」


恵は笑みを浮かべ「うん」と頷いた。


その様子を校舎から見ていた
朱音はどこか浮かない表情していた。
恵達から目を逸らし
その場から離れていく。




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